A DAY WITH Y

Vol.3 Mohamed

モデル、DISSONANCE オーナー

すっと手を伸ばしたとき、そこにある服。
なんてことない“普通の服”だけど、
なぜかいつも着てしまう。

〈Y〉が提案するのは、そんな服です。
日常にそっと寄り添いながら、
そのひとの個性と結びつく。

じゃあ、このブランドの服をまとうのは
どんなひとなのか?

デザイナー・田口令子と、
アドバイザー・金子恵治氏が、
〈Y〉を着るひとのもとを訪ねます。

じゃあ、このブランドの服をまとうのはどんなひとなのか?
デザイナー・田口令子と、アドバイザー・金子恵治氏が、
〈Y〉を着るひとのもとを訪ねます。

「こうゆうスタイルがいい」と
思うものを素早く反映させる。

ーモハメドさんはいつ頃からファッションに興味を持ちはじめたんですか?

モハメド:モデルの仕事をやりはじめてからですね。19歳の頃にスカウトでキャリアをスタートさせたんですけど、いろんな服を着るようになり、どんどん好きになっていきました。だけど、日本で服を買うとぼくに合うサイズがなかなか見つけられないんです。それでセレクトショップや古着屋を回るようになって、サイズが合う服を買うようになりましたね。

金子:「DISSONANCE」をはじめたのはいつ頃なんですか?

モハメド:ここは3年前ですね。ぼくは大学でウェブデザインを専攻していて、もともとウェブマガジンのようなものをつくりたかったんです。それでスタイリストの友達と一緒に作品撮りをするようになって、ウェブにそれをアップしていて。

だけど、あるときから限界を感じるようになって、なにか打開策を探していたんです。その結果、集めてきた服でヴィジュアルを撮りながら、それを売る場所をつくろうということになって。

金子:へぇ~、すごい。

モハメド:それで外苑前にあるマンションの1室を契約したのがスタートで、昨年に中目黒へ移転しました。

田口:お店のコンセプトはあるんですか?

モハメド:ぼくもそうだし、共同運営しているスタイリストの子も、ノンカルチャーなんですよ。矛盾しているように感じるかもしれないけど、それがコンセプトなのかなって最近は思ってます。自分たちが「こういう服とかスタイルっていいよね」って思うものを素早くヴィジュアルやお店に反映させるというか、そういうスピード感を大事にしてるんです。

金子:なるほど。その話を聞いてすごく腑に落ちた感覚があります。このお店を見ていると、いろんなジャンルの服が置いてあるのに、なぜかまとまりを感じるんです。でも、そのまとまりがどうやって生まれているのか、なかなか言葉で表現しづらいというか。

モハメド:それを考えなきゃなって思ってますね。次のフェーズへ行くためには、言語化しないとねって話しているんです。

金子:ここにある服たちはもともと、作品撮りのために必要なアイテムだったわけですよね。

モハメド:ヴィジュアルベースで買い付けている服が多いですね。もちろん、そうじゃない服もあるんですけど。

ーヴィジュアルをつくることの楽しさやモチベーションって、どういうところから生まれるんですか?

モハメド:もともと表現欲みたいなものがあって、「こういう絵作りをしたい」っていう気持ちがぼくは強かったんです。だけど、モデルってすごく受け身の仕事じゃないですか。だから自分で表現の場をつくれば、こちらから発信ができる。この場所があること自体がすごくモチベーションになっていますね。

いろんなスタイリングに合ったり、
ムードに合う服。

ーモハメドさん自身のファッション感はどんなものに影響を受けていますか?

モハメド:品があるけど遊び心も感じるファッションが好きですね。雰囲気としては柔らかめな感じが好みというか。

田口:遊び心ってどういう感じですか? 気になる!

モハメド:たとえば普通のニットポロの背中に、背番号みたいな数字がついていたりとか。そうゆうちょっとした遊び心というか。

田口:なるほど~! 差し色とかもそうだけど、そういうデザインって大事ですよね。

モハメド:お店の雰囲気もあえて無機質な感じにしているんです。そこにマレンコのソファを置いて柔らかさを表現したりとか、レースカーテンもそういう意図がありますね。

ー今日は〈Y〉のニットを着てくれていますが、ご自身のファッション感との親和性ってありますか?

モハメド:ありますね。ぼくは仕事のときも遊びのときも同じ服を着ながら、スタイリングによってムードを変えて着こなしを楽しむタイプなんです。その中でいろんなスタイリングに合ったり、ムードに合う服が好きで、〈Y〉ってまさにそんな感じなんです。オンもいけるし、オフもいけちゃうみたいな。全身〈Y〉で合わせなくても、ワードローブの服にすごく馴染むんですよ。

ーベーシックだからこそ馴染むし、コーディネート欲を掻き立てられるというか。

モハメド:そういう感覚もありますね。自分はカルチャーがないから、本当にいろんな組み合わせを試すんです。

金子:サイジングもバッチリ合ってますよね。

モハメド:袖を通してみて、ピッタリだなって思いました。デザインも着心地もいいし、めちゃくちゃいいですね。

田口:〈Y〉って、サイズピッチがアイテム毎に違うんです。もしかしたらそれがハマったのかも。

モハメド:サイズ表を見て、自分の服も測って比べてみたんですよ。それで合いそうだなって思って。いつもネットで買うときはそうしてますね。

ーなるほど。ちなみに金子さんはネットで服を買うことってあるんですか?

金子:ぼくは新品の服をネットで買うことがないんですけど、古着ならサイズ感がなんとなく分かるから、結構大雑把に見ちゃいますね。サイズはなんとなくチェックするんですけど、それよりも価値に惹かれて買っちゃうことのほうが多いです。

ー着なくても持っておきたいというか。

金子:バッチリかっこよく着られるものをオンラインで買うっていう感覚はそもそもないです。そこまでこだわらないものを買ってますね。

モハメド:クローゼットの中にあまり着ない服ってありますか?

金子:めちゃくちゃありますよ(笑)。だけど、観賞用っていうわけでもないんです。最近、「買うこと」と「着ること」って違うんだなって思うようになってて。買い物をするのは、「服を着たいから買う」っていうわけではないんだなって感じるんですよ。

ーどういうことですか?

金子:買うときは着ようって思うんだけど、いざ手に入ると目的が違ったということがあるんです。その目的を確認するための買い物だったんですよね。いろんな服を知るために必要なことというか、買った服を着ないのは無駄なことのようで、実はそうじゃない。ファッションの仕事をしてるからそう思うのかもしれないけど、チャレンジしないと新しいアイデアって獲得しにくいじゃないですか。

一方で〈Y〉の服を考えるときは、着て欲しいということを念頭に置きながら考えています。そのときに、自分の中での買い物の体験が役に立つ。「これは絶対に着る」っていうのが自分の中にはあるので。

田口:私もみなさんにとって〈Y〉は便利な服であって欲しいと思いながらデザインしてますね。ベルテッドパンツとか、スナップボタンのシャツとか、一見すると風変わりな服なんだけど、実は便利だし理由がしっかりとあるんです。そこには金子さんならではの審美眼がしっかりと反映されていて。

金子:たとえばGジャンひとつを取ってみても、ヴィンテージを含めてこれまでにたくさんのGジャンがつくられてきたわけじゃないですか。だけど「この時代のこの形がいまの気分に合う」っていうことを考えて田口さんに提案してますね。それもいろんなものを買ってきたからわかることなんです。それを今度は田口さんがいまの気分を反映させながらデザインしていて。

モハメド「DISSONANCE」では〈neutral〉っていうオリジナルの服もつくっているんですけど、それは買い付けた服を見ながら「ここがこうだったらいいのに」っていうアイデアから生まれているんです。どこか物足りない服に、ぼくたちのちょっとしたエッセンスを加えてデザインしてますね。

金子:正しいアプローチですよね。つくる理由がしっかりとある。

モハメド:そうですね。「ないからつくる」っていう。

金子:このお店のラインナップにめちゃくちゃ馴染んでますよね。「これも古着なのかな?」って思っちゃうというか。

田口:古着屋さんにあるオリジナルアイテムってわかりやすいものが多いんですけどね。

モハメド:「これ新品だったんですか?」ってよく言われますね(笑)。サンプルも何度も修正してつくってます。展示会をやっているわけでもないし、つくりたいときにつくれるので、そのぶん納得のいくものをつくってますね。

田口:3年でここまでやってるってすごいですよね。

モハメド:服をつくる環境ができたのはありがたいですね。

夢はファッションショーを
すること。

ー話を聞いていると、モハメドさんってすごくファッションが好きなんだなって思うんですが、仕事をしながら高揚感を感じるのはどんなときですか?

モハメド:いいヴィジュアルができたときも感じるし、いいなって思っている服やスタイリングを友達やお客さんと共有できたときも感じます。〈neutral〉って、基本的には自分たちが欲しいと思うものが大前提としてあるんです。だからお客さんに手に取ってもらえるかは、つくった時点ではまだわからない。だから「これいいですね」って言ってもらえると、本当にうれしいんです。

金子:将来どうなっていくんだろう?

モハメド:モデル業に関しては、海外でも挑戦したいなって思ってます。可能であれば30歳になる前に。「DISSONANCE」に関しては〈neutral〉をもっと充実させたいですね。本当に夢なんですけど、ファッションショーをしたいです。だけど自分は興味あることにどんどん手を出しちゃうタイプなので、どうなっていくのか自分でもわからないですね(笑)。

金子:ぼくもファッションが好きだけど、写真や自転車も好きで、興味の対象はいろいろあるんですよ。それが仕事のついでになったらいいなって、どこか思っている自分もいて(笑)。チャレンジできるならしたいって常に考えているんです。モハメドくんの場合はまだ年齢も若いし、いろいろやって欲しいって思いますね。

モハメド:ありがとうございます。でも、いまもめちゃくちゃ楽しいんです。それが原動力にもなってますね。